正規分布の確率密度関数(ガウス関数)のフーリエ変換
命題
正規分布
のフーリエ変換は、
である。
特に標準正規分布
のフーリエ変換は、
証明
定義に従って計算してもよいが、まず次の補題を示す。
時間軸推移公式
のフーリエ変換を とする。
のフーリエ変換は、
実際、フーリエ変換の定義にあてはめて
である。
これは時間領域における遅延(time delay)は、振幅スペクトルには影響を及ぼさないが、位相スペクトルには線形に影響を及ぼす(線形位相特性 linear phase characteristic)ことを示している。
さて、もとの問題に戻って、
とおくと、
であるから、上の補題により、
結局、
を示せば良い。
指数の肩を平方完成すると、
積分部分を
この積分は、以前の記事 標準正規分布に従う確率変数のコサインの期待値 で既にやったが、改めてやっておこう。
正の実数
とする。
また、
なので、
同様に、
そこで、
右辺の第二項は、実軸上でのガウス積分であり、
よって、
結局、
なので、
よって示された。
補足
標準正規分布の確率密度関数は、係数を除き、フーリエ変換の前後で同じ形をしていることから、フーリエ変換における不動点の一つとみなすことができる。
なお、フーリエ変換の定義式のバリアントの一つに
このような関数変換における不動点は、self-reciprocal function と呼ばれる。
フーリエ変換のself-reciprocal functionとしては、他に
以前、 標準正規分布に従う確率変数のコサインの期待値 を求めたが、
この命題が示されてから振り返ると、標準正規分布の確率分布関数のフーリエ変換に
実際、フーリエ変換とは、
そこで、標準正規分布
のフーリエ変換は、
であるが、オイラーの公式により、
を代入すると、
よって、
今回の結果を使うと、
確率密度関数のフーリエ変換の共役を一般に、特性関数(characteristic function)という。
この文脈の場合、確率変数には
と普通は書かれる。
そこで、ここで証明した命題を確率論の言葉で書けば次のようになる。
正規分布
特性関数は、
である。
特に標準正規分布
特性関数は、